
・此福と翼(さいわいとつばさ)
JR北の快速列車である海峡と、(旧)東日本フェリーの高速船であったゆにこん(ジェットフォイルの方)の
物語をここに置いていこうと思っています。
【小説版】 2026.04.15 冒頭を掲載
「……東日本フェリーが高速船を入れるって?へえ……」
快速海峡は、摩周丸の顔を眺めながら薄く笑った。
「こんなに早々と噂話を仕入れてくるなんて、随分と“政治”が上手くなったじゃないか」
「“戻る”のに間が開いたおまえと違って、俺はずっとこの海でふねをやっているんだよ」
摩周丸は海峡にコーヒーの入ったマグを渡すと、自分のものに角砂糖をどぼどぼと幾つも注いだ。
ここは、若松埠頭に係留されている摩周丸自身の喫茶室である。
とはいえ、連絡船としては引退済みで、保存先への正式な売却を待っている、という段階であるから、
一般に喫茶を営業しているわけでは到底なく、明かりは窓から差し込む日の光で、
コーヒーも湯は保温ポットから注いだだけであった。
「ふうん」
海峡は、摩周丸が押してよこした缶の蓋を開けて、角砂糖を3つ、取り出した。
「じゃあ、“ずっとふねをやっている”おまえに訊くけど。
その高速船は、“俺”と競合すると思うか?それとも、やり合うのは“はつかり”の方か?」
「そうさねえ……」
摩周丸はマグをぐい、と傾けて中身を飲み干すと、テーブルの端に無造作に積んである紙ナプキンで口を拭った。白髪の連絡船は紙束をくるくると丸めると、その先端を海峡にずいと、突きつけた。
「間違いなく、競合するのは“おまえ”だね」
「……やっぱり」
両手を挙げて降参、という身振りをすると、摩周丸は海峡に向けた紙の筒を引っ込めた。
「聞いたところによれば、入れるのは水中翼船だという話だ。まあ、砕いた言い方をするなら、
ジェットフォイルってことだな。……1時間40分で走るらしいぞ」
「青函を?」
「青函を」
早えなあ、高速船ってやつは。摩周丸は誰に向けるとでもなく、小さく呟いた。
【漫画版】 2026.04.15 展開メモ(かなり先の展開)

このシーンは本編第三部の直後(最終シーンの前)を想定。
